
Gluten laboでは、主催者・田中が有識者に直接話を伺い、流行やイメージだけで語られがちなグルテンに関するお話を、実体験と専門知見の両面から掘り下げていく対談企画です。
パンを楽しみたい。でも体調も気になる…そんな迷いの背景にあるのが「グルテン」でしょう。消化器内科医として日々診療を行いながら、私生活ではパンを愛してやまない石岡先生にグルテンをめぐる誤解と、自分の体との向き合い方を伺いました。
グルテンは本当に「万人の敵」なのか?
田中:最近はグルテンフリーという言葉がよく聞かれるようになりました。先生はこの流れをどう見ていますか?
石岡充彬先生(以下・敬称略):診療の現場にいると、「グルテンが悪い」と一言で片づけるのは難しいなと感じます。確かに、パンをやめて調子が良くなる人はいます。でも、その理由が本当にグルテンなのかは、実は分からないことも多いんです。
田中:分からない、というのは?

石岡:小麦にはグルテン以外にも、腸内で発酵しやすい糖質が含まれています。それが腸内細菌のエサになって、ガスが増えたり、お腹が張ったりすることがある。本人は「グルテンが合わない」と思っていても、実際には含まれるフルクタンという糖質が原因だった、ということも少なくありません。だから「パンを抜いて楽になった=グルテンが原因」と考えるのは、少し早い場合もあるんですね。
田中:グルテンによる影響は腸内環境の個人差やその日の体調なども関係しますか?
石岡:大いに関係します。腸内細菌のバランスは人それぞれですし、同じ人でも睡眠不足やストレス、疲労の蓄積で変わりますので、体の調子がよくないなと感じるときにグルテンを少し控えることは正しい判断だと思います。

田中:日本ではグルテンが原因とされる病気はあまり聞きませんが、実際にはどうなのでしょうか?
石岡:日本で医学的に診断できるのは、セリアック病だけです。ただ、実際に診断される日本人は非常に少ないですね。一方でグルテンがそもそも体質的に合わない、非セリアック・グルテン過敏症で、グルテンを摂った際にお腹が張る、倦怠感、お腹を下すといった症状が出る方は一定数いる可能性は高いと思います。実際にお腹の張りで来院された方に薬を処方しても改善が見られず、普段の食生活を伺ってみると、パン食だったということもありました。
パン好きな石岡先生は、どのようにパンと付き合っている?
田中:パン好きとしても有名な石岡先生ですが、どのくらいの頻度で食べていますか?

石岡:ほぼ毎日食べています(笑)。子どもの頃、母が家でパンを焼く人だったので焼き立てがいつも家にあるのが幸せでした。パン好きは本当に昔からですね。パンの東京100名店を巡ったことがきっかけで食べログに記事を書いていたこともありました。
田中:本当にパンを愛していらっしゃいますね! かなりの頻度で食べられていますが、体の不調などは出ませんか?
石岡:ほとんどありませんね。体質的に小麦を食べても不調が出にくいタイプなんだと思います。

田中:潜在的な体質は見極めていく必要がありますね。小麦の問題だけでなく、調理によって影響が出ることもありますか?
石岡:不調が出た際はグルテンだけでなく、その他の具材や調味料が影響している可能性も低くありません。僕もパンは問題ないのに、ラーメンやカレーで具合が悪くなったりお腹が張ったりします。逆に妻はパンを食べるとすぐお腹が張るんですが、カレーは平気。人によって違うので、「小麦が悪い」「グルテンが悪い」と一括りにはできないなと日常でも感じていますね。
田中:パンを食べるときに気を使っていることはありますか?
石岡:お腹の声に耳を傾けることです。食事は栄養補給だけじゃなくて、気持ちを満たす役割も大きいです。「おいしい、うれしい、楽しい」その感覚も体の反応の一部。「グルテンは食べないほうがよいですか?」と聞かれることも多々ありますが、決してゼロか百かで極端に考える必要はありません。過度な我慢を強いるのではなくて、ご自身の体に不調が出ない適量を見つけて、その範囲内で楽しんで食べることを伝えていますね。例えば、グルテンを分解するサプリを活用して不調が出ないようにするなど、診療と並行して無理のない食の楽しみ方も同時に伝えていきたいなと思っています。
「腸活」と「パン欲」を両立するための考え方
田中:パンは食べたい、でも不調が気になるという人は、何を意識すれば良いのでしょうか?

石岡:まずはパンの種類です。日本のパンは主に、小麦の粒の中心部分(胚乳)のみを使った精製された小麦粉で作られることが多いので、合わない人は全粒粉や雑穀系、ライ麦、ハード系を試してみるのも一つだと思います。
田中:食べ合わせについてはなにかアドバイスがありますか?
石岡:パン単体より、オリーブオイルやたんぱく質、ヨーグルトなどと一緒に食べると、腸への刺激が分散されやすい。鶏肉やハムでタンパク質を一緒に摂れるサンドイッチは理にかなっているんです。
田中:不調が気になる方に特に注意してもらいたいパンの種類はありますか?
石岡:菓子パンや揚げパンですね。グルテン以前に、糖質と脂質の負荷が重なって腸に不調が出てくることはあるかと思います。気になるようであればパンの種類、一緒に食べるものは意識してもよいかもしれません。
自分の体質を知るためにまずできること
田中:自分に合うかどうかを見極める方法はありますか?
石岡:一番現実的なのは、2週間ほど完全に抜いてみることです。そこで明らかに楽になるなら、何かが関与している可能性はあります。
田中:まずは体内にない状態を作るということですね。その後どのように判断し、向き合っていけばよいですか?
石岡:少量ずつ戻してみて、どのくらいなら大丈夫かを確認していきます。量なのか、頻度なのか、種類なのか。また、グルテン分解の粉を使ったパンとそうでないパンをブラインドテストのように食べ比べてみて、不調が出るかを試しながら自分の体を知っていくのがよいかと思います。この工程を試してみると、「なんとなく不安だから避ける」から「自分で判断できる」に変わっていきますよ。

田中:食を楽しむために自分の体を知ることも大切なんですね。
石岡:その通りです。流行や他人の体験談に引っ張られすぎず、自分で選べる状態になることがいちばん無理なく、楽しみながら食事に向き合える付き合い方だと思います。

Profile/
石岡充彬(いしおか みつあき)
医師:消化器内科専門医。日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック 院長。医学博士。日本内科学会認定内科医/日本消化器病学会専門医/日本消化器内視鏡学会専門医・指導医など。SNSでは「東京パン生活。」としてパン情報も発信。
instaglam:東京パン生活。
日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック
https://ningyocho-naishikyo.jp/
田中翔大 (たなかしょうた)
株式会社エイトウィル CEO。大学卒業後、野村證券株式会社に入社。2017年、株式会社HRBrainの創業メンバーとして参画し、2020年に取締役に就任。2024年、自身の保有株式を投資ファンドへ譲渡し退任。2025年、株式会社エイトウィル創業し、「グルテン分解乳酸菌」の国内総販売元として、従来の「常識」にとらわれず、本質的な価値を提供し続けることを追求している。
Eight Will
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